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「使節も、密偵も、戦争も全部忘れて、ふて寝でもしてやりたいと時々思うものだ。その代わり、お前にはずっと気ままに平和な時間を過ごしてもらいたかった。だが、もう猶予は使い果たしてしまったようだ」
「父上……」
「我らにスチュアートの姓を賜ったメアリー様はイングランドに亡命し、後ろ盾は最早無い。イングランドはブリテン諸島全てを征服しようとしている。そのイングランド女王エリザベスに後継は居らず、継承権を巡って諸国が策謀を仕掛けてくる。遅かれ早かれ、このハイランドも大乱に巻き込まれるだろう。お前はその時の王として、備える時が訪れたのだ」
政治の話になると、ライオネルは再び《国王》の姿に戻った。あの鋭い眼光が自分へ向けられる日が来るとは、レオナルドは考えもしなかった。
するとすぐにライオネルは首を振って、染みついた《国王》の顔を振り払う。
「おっと、いかんな。ここに座っているとすぐこれだ。早いが今日は終わりにしよう。レオナルド、『出歩き』用に着替えてから部屋で待っていなさい」
「それって……お忍びで出かけるってこと?」
「お前を連れて行きたい場所がある。日暮れ頃に出発するぞ」
ライオネルはきょとんとしているレオナルドを軽くなでると、さっさと執務室から出ていった。
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