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机の上には書きかけの勅書と羽ペンが片付けられずに残っている。内容はレオナルドに宛てた今回の王命だが、途中で何度も書き損じた形跡があった。
(ほったらかしだ。道具はいつもきちんとしまってるのに……)
自分の息子を旅に出す父親の心境を、そこから察するのは難くない。当のレオナルドよりも、この決断に迷うライオネルの苦悩が如何に大きいものか、解らないレオナルドではなかった。
執務室を出る前に、一度ちらりと文机の方を振り返る。飾り気のない、よく磨かれたオークの机。ひたすら自分の中の考えと向き合う場所だ。
地球儀、世界中の本、書類の山。自分がそれらを引き継ぐのはきっとそう遠くない未来だろう。近くはないが、確実にやってくる未来。
レオナルドはそっと扉を閉めて、着替えるために自室へと向かう。
(……色々話そう。きっと、今夜が最後かもしれないから)
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