2:Siuil A Run

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2:Siuil A Run

「――思い返せば、こうして従者抜きに出歩くのは初めてのことだな。皆がいつもついているというのは頼もしい限りだが」 「ジェフリーにロバート、それにセルマ。従者っていうよりは、家族ぐるみの付き合いって感じだけどね」 「前王時代からもう二十年近くになるか。ロバートの補佐とエリンの後押しが無ければ、私は今頃一介の将軍としてスコットランド王家と戦っていたかもしれん」  日が沈んだメアリーストンはとても静かで、雨上がりのひんやりした風が石畳を通り抜ける。出歩く猫もほとんどおらず、家々の木窓から漏れる明かりがうっすらと街路を照らす。  レオナルドとライオネルは城の中とは違う簡素な服装に着替え、親子並んで夜の街を散歩する。遅い時間に街に出たことのないレオナルドにとって、誰もいない街中はとても新鮮だった。 (みんなが殿下って親しんでくれるのはうれしいけど、王子じゃない《僕》でいたくて、いつも街の外に出かけてるんだよね。父上も今日はそんな気分なのかな)  ライオネルがお忍びで出かけるのは、決まって夜の遅い時間だ。夕食を済ませてレオナルドが自室に戻った後、王の従者ロバートと一緒に城を抜け出すのだ。その行先は、今までレオナルドには教えようとしなかった。
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