1:Slow Air

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「今すぐに、だそうです。火急の知らせが届いたとかで。とにかく早く戻ってください」 「分かったよ。ちょっと待って」  レオナルドは服に付いた花びらをぱんぱんと払って、急かせるジェフリーについていく。 「本当にレオ様はここが好きですね。花畑で昼寝ばかりしていたら、そのうちラベンダーの栄養にされてしまいますよ」 「大げさだなあ」  レオナルドは猫の国の王子であり、ジェフリーはその従者。年も近いふたりは乳飲み仔の頃より共に育った仲で、立場の上下はあれど、気の置けない冗談を言い合える関係だ。 この季節になると、レオナルドはいつもこのラベンダー原にふらりと出掛けては、ジェフリーに呼び戻されるのが習慣のようになっていた。北国の短い夏にたっぷり昼寝をする、それがレオナルドのは何よりも好きなことだ。  青い雑草の中の細道を、レオナルドとジェフリーは歩いていく。そこに、湿っぽい一陣の風が近くを駆け抜けて、猫たちの細いひげを揺らした。 「おや、これはもうすぐ一雨来そうですね。濡れないうちに帰りましょう」 「そうだね。ほんっと、空っていつも気まぐれなんだから」     
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