2人が本棚に入れています
本棚に追加
「今すぐに、だそうです。火急の知らせが届いたとかで。とにかく早く戻ってください」
「分かったよ。ちょっと待って」
レオナルドは服に付いた花びらをぱんぱんと払って、急かせるジェフリーについていく。
「本当にレオ様はここが好きですね。花畑で昼寝ばかりしていたら、そのうちラベンダーの栄養にされてしまいますよ」
「大げさだなあ」
レオナルドは猫の国の王子であり、ジェフリーはその従者。年も近いふたりは乳飲み仔の頃より共に育った仲で、立場の上下はあれど、気の置けない冗談を言い合える関係だ。
この季節になると、レオナルドはいつもこのラベンダー原にふらりと出掛けては、ジェフリーに呼び戻されるのが習慣のようになっていた。北国の短い夏にたっぷり昼寝をする、それがレオナルドのは何よりも好きなことだ。
青い雑草の中の細道を、レオナルドとジェフリーは歩いていく。そこに、湿っぽい一陣の風が近くを駆け抜けて、猫たちの細いひげを揺らした。
「おや、これはもうすぐ一雨来そうですね。濡れないうちに帰りましょう」
「そうだね。ほんっと、空っていつも気まぐれなんだから」
最初のコメントを投稿しよう!