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メアリーストンと呼ばれるその町は、人間からみれば建築家の箱庭のように見えるかもしれない。草と岩肌以外に何もない場所に突然現れる計画都市は、妖精が住んでいると納得するに至らないほどの《人間的な》技術が用いられていた。
自然の中で暮らす他の妖精とは違い、ケットシーは人間の先進的な技術を好んで用いる。築かれてまだ20年にも満たない新しい街には、ブリテン諸島のあらゆる地方から大勢のネコが移り住み、猫王国史上でも類を見ない活気を見せていた。
白壁と木材の模様が美しい三角屋根の家や、赤レンガを贅沢に使った店構え。それらはすべて人間用のほぼ半分の大きさで建てられており、碁盤目状の通りによって整然と並び立っている。金属に革、ガラス、木工など、街の中央を貫く目抜き通りには最新の技術を用いた職工の工房が集められ、メアリーストンの商業振興の大黒柱を担う。
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