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美術室の扉をそっと開けた杏菜は目を見開く。 課題のための開放されているはずの美術室は人っ子一人見当たらない。一瞬間違えたのかと思うが、黒板には利用者向けの注意点が書かれている。 もう、こうなればやけくそだ。 暑い中歩いて学校まで来て、おめおめと帰るのも癪に触る。杏菜は美術室を独り占めすることにした。 真ん中の席を陣取ると、用具を取りに隣の美術準備室へ向かう。準備室にはクーラーがないので、扉を開いた瞬間にもわっとした暑さが全身を包んだ。 雑多な棚を漁り、絵の具のセットを探すことにする。…と。 ガシャン!と音を立て、棚の上からキャンバスが降ってきた。 すんでの所で避けた杏菜は慌てて絵を拾い上げる。傷がついていないか確認し、裏返した。
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