ドロー・ドロー

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「隣の女子、彼氏の愚痴いっぱい言ってるから」  確かに、と私も耳をそばだたせてみる。最近調子にのってるだとか、優しくなくなってきただとか、他の女の子の話をするだとか。  そんなにたくさん彼氏の事知ってるのねぇ、と感心しちゃう私はきっと変だろうな、とアツ君を見ると、アツ君は私を見ていた。 「何?」 「レーコさんも言ってるのかなって」 「言わないわよ」  だってアツ君の文句なんてないのだ。 時間を見つけては私に構ってくれて、付き合いたての頃は鬱陶しいくらい連絡もくれた。 そして毎日こう言ってくれる。 「即答するとこ、好き」  ナチュラルにこう言ってくれる。 一日一回の時もあれば、十回の時もある。 何かしらにつけて彼は言う。 「……ありがとっ」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加