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03_楽園
夕食に起こされて降りていくと、テーブルには大きめのパンひとつとシチュー、グラスに入った果実酒が用意されていた。
「お客さん、ラッキーだねぇ。今日はうさぎのシチューだよぉ」
何がラッキーなのかわからない。もしかするとこの町では、肉が支給されることが稀なのかもしれない、などと考えながら、俺は黙ってスプーンに手を伸ばした。
自慢ではないが、俺は好き嫌いどころか、食い物の味にはほとんど頓着しない。辺境の村を訪ねまわったり野宿を繰り返したりする身に、味の良し悪しにこだわっている余裕はないのだ。匂いや味に鋭敏であることは認めるが、それは食い物が腹を壊すものでないかを確認するために必要だったからでしかない。
茶色のシチューを一口、口に運ぶ。いわゆる典型的なブラウンシチューだ。塩分が控えめに感じられるのは、山歩きで俺自身が体力を消耗しているせいだろう。肉も適度に柔らかく、人参や玉ねぎなどの野菜も新鮮なようだ。イモや豆の類が入っていないのは、パンが大きいせいかもしれない。
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