【雨降りの日、僕は】

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 その日も雨だった。  俺はスクール鞄を肩に背負うと、愛自転車を急発進させた。  シャーッとタイヤが水を切る冴えた音が俺の通った後に出来る。その音を掻き消さんばかりに、何やら怒鳴っているおふくろの声が聞こえた気がした。多分、 「雨の日は自転車に乗ってはいけません!」  なんて叫んでんだろう。 「そんなこと言ってたら遅刻しちゃうよ」  俺は愚痴るとスピードを上げた。期間的に見れば半年足らずとはいえ、高校入学してからの毎日、雨の日だろうが風の日だろうが欠かさず通い続けたこの駅に出る道で、今更事故なんか起こしますかって。  俺は慣れた手付きでハンドルを右に切った。と、その時、ある少年のことを思い出した。 「そういやあいつ……」  俺は声に出して呟いていた。 (今日もいるんだろうか――)
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