【雨降りの日、僕は】

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 そして次の日。『二度あることは三度ある』という諺を見事に証明してみせた。傘の差し方は変わってなかった。  多分にあいつは雨の日だけ、ここを通るようにしてるんだな。俺は二度、三度と会う内に、次第に親しみを感じてきた。 「あいつも親にとやかく言われてんのかな」  そんな思いが生じたからだった。  しかし、それも三、四回目までのこと。五回、六回、と奴に会っていくうち、さすがの俺でも疑心と事の奇妙さを感じずにいられなかった。  雨っていうと必ず会う、あいつは誰だ?  何故あいつとはあの場所でしか会えないんだ?  普通に考えればこんな事、何でもないように思えるけど、雨の日だけってのが不気味だった。それに、もう一つ気になることがあった。俺、未だに奴の顔を見たことがない……。  なんでもないようなことに思えるけど、でもこれって考えれば考えるほど不思議というか、……不気味、だった。  一時期、俺は本気で奴のことを考えていた。考えれば考えるほど、気味が悪くなって奴と会うのに気が引けた。  奴に会わない方法は二つ。一つは今までより早く家を出る。もう一つは遅く出ればいい。しかしこれ以上、家を出るのを遅らせる余裕なんて俺にはないし、かといってこれ以上、早く出るなど、俺には不可能。それが出来たら最初からこんな苦労してないって……。  為す術がないとわかると人間ってやつは、『開き直る』という言葉を知るらしい。  なんで俺があいつのせいで俺のライフスタイルを変えなくちゃいけない?  奴は奴。俺は俺。  悩んで損した。  こうして俺は開き直った。しかし何の因果か開き直ってからというもの、雨降りの日がなかった。当然、奴に会うこともなかった。夏休みを挟んでいたこともあるだろう。  そして今日。本当に久し振りに雨が降った。ということはすなわち、本当に久し振りに奴に会えるという訳である(別に好んで会いたいわけではなかったが)。  でも……なんだろう、この胸騒ぎは。  不安って感じでもない、なんて言えばいいのかよくわからないけど、何かがあるって感じ。起こるっていうよりは、待っているっていう予感……。
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