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「つまり、その雨の日にしか会えなかったその少年って、いわゆる幽霊……だったってこと?」
「多分、ね」
俺は静かにカップを置くと、彼女から窓の外に視線を移した。
外は相変わらずの雨だった。シトシトと、音のない、霧雨のような雨……。
あいつは高校に入ってから三ヶ月後に事故に遇い、その後、三ヶ月の意識不明の重体を保ちつつも、けっきょくそのまま帰らぬ人になったと聞いた。
未練も、残るよな……。
俺はあれ依頼、奴の忠告に従い、雨の日に自転車に乗るのは止めた。
「なんだか怖いな」
彼女は小さく呟くと、両腕で抱き締めた体を震わせた。
「ああ、ごめん。変な話して」
「変な話っていうか……雨の日にして欲しくはなかったかも」
───雨だから思い出すんだよ。
俺は彼女にごめんと謝罪の意を込め微笑むと、今一度、表の雨を見やった。
───自転車には乗らないでね。雨の日は……
【Fin.】
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