◆プロローグ

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「大丈夫だよ。さっきも言っただろう。ここはちょっとやそっとの爆弾とかや衝撃じゃ壊れないよ。ここに居れば安全だ」  今、自分が出来る限りの笑顔で返した。だが、その笑顔はティアの瞳を介して、何ともぎこちない表情で映っているのが見えた。  青年は空いている手をぎゅっと強く握りしめ、自分の不安な気持ちを押し固めた。改めて現状を把握する。  建物の崩壊は心配無い。崩壊しない限り電気の消失も無い。地上が今どんな状況になっているかなんて、どうでも良い。  案じるのは、握っている手から小さく震えているのが伝わるティアの身と……ティアの未来のことだった。  青年とティアの足が止まる。  二人の目の前には、まるで壁と一体化したようなシンプルな扉があった。  青年は肩にかけていたショルダーボックスを地面に置いて、白衣の内ポケットから一枚のカード―ID認証カード―を取り出した。それを扉のすぐ近くの壁に設置されていたカードスキャナーに通す。  それだけでは扉のロックは解除されない。そこで青年は続けて、スキャナーの隣にあるディスプレイに表示されている数字キーを手馴れた動きで押していき、最後に黄色いキーを押した。 ――ピィーーー!  解錠音が鳴り響くと、扉が開かれた。     
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