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 台風一過の翌朝、小さな生き物があちこちに見掛けられた。  それはネズミに何処か似た鳴き声を上げ、イタチのようにしなやかな身体を持った、見たことのない生き物。背中の黒い毛並みがぎざぎざと走っているのが妙に印象的だった。  そしてそいつがきゅうきゅうと鳴くと、そいつの周りに小さな火花が走る。  辞典で調べてみてもよく分からなかったが、インターネットで検索したら、思わぬ名前が出てきた。  ――雷獣。  どうやらその架空の生物がこいつらの正体らしい。  正直そんな架空の生物がこのあたりを闊歩していること自体がおかしいけれど、実際にいるのだからどうしようもない。  しかも、火花を飛び散らすとなれば、疑いようもなくなってしまう。  その珍しい生き物は人懐こくもあり、ペットのように飼う人も中にはいた。    それから数日は晴れの日が続き、雷獣たちもへばり気味だったが、数日後にやってきた雷を伴う前線に、雷獣たちはざわざわと火花を散らして明らかに浮き足立っているようにも見えた。  そしてその晩、酷い雷雨になった。  あちこちで雷が落ち、稲光に身体がすくむ。  しかしそれがごく近所に落ちた時、本気で目の前が真っ白くなった。眩しすぎて目も開けていられない。  それが少しおさまって、ふとあたりを見渡すと、きゅうきゅうという鳴き声が一切しない。  もしかするとさっきの閃光はあいつ等を迎えに来た親だったのかも知れないと思うと、ほんのりと口元が緩んだ。  いつかまたあいつ等を見る日があることを、こっそり祈りながら。
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