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第6章 彷徨う気持ち
御剣さんに対する気持ちは何なのだろうか。
一緒に居ると安心するし楽しい。だけど、その気持ちは、友達としてなのか、それとも・・・・・・
「あ!御剣さん!」
「・・・」
声を掛けたが御剣さんは視線を逸らして早歩きで消えていった。
追い掛けたが、姿は無く周りを見渡していると急に腕を引かれ目を瞑ると、フワッ、と包み込まれるような感触に包み込まれた。
目を開けて、視線を上げると、そこには御剣さんが居て声を出す前に手を離されてしまった。
どうやら、印刷室に引き込まれたらしい。
「御剣さん?」
「私の事を思い出したのに何で付いてくるんです?普通は避けるでしょう。」
「そんな事しません!だって、御剣さんは私に優しくしてくれたし・・・・・・昔だって私の為を思ってやってくれたんだと分かってますから 」
目の前に居る御剣さんが驚いたように目を見開いているのが分かる。
私は御剣さんが友達としてじゃなくて"異性"として好きなんだ。だから、一緒に居て楽しいし安心して幸せな気持ちになったんだ。
それに、さっき避けられた時に凄く苦しかった。
「桃枝さんは昔と変わりませんね。お人好しで、優しくて」
「あの・・・・・・御剣さん」
「何ですか?」
話そうとした瞬間、急に視界が真っ暗になる。
身体の力が抜けて何も感じない中で、微かに声が聞こえた。
優しい優しい御剣さんの声が。
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