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何がそんなに気に入らないんだか、と、ため息を零して去って行く苗は、知らないなら仕方ないとして。
ぶすっとした顔つきをしている徹弘とは対照的に、黒い着物に身を包み、仕事がしやすいようにとたすき掛け姿であれこれと指示しを出している宏信が平然としている様子に、徹弘は納得がいかなかった。
もしかして、忙しさにかまけて話さずに済んだことに、安心しているんじゃないのか? という、穿った考えが徹弘の脳裏をちらつく。
いや、さすがにそんな狡さは持ち合わせていないだろう、と、徹弘は即座にその考えを打ち消した、けれど。
(だったら、それならそれで)
一言、
『今はこういう状況だから、落ち着いた頃、あらためて』
とかなんとか、フォローしてくれてもいいじゃないか。
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