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宏信が口下手で、口数の少ない男だというのは、重々承知している。
…だけど。
恋人が不安にならないよう努めるべきだろう、という気持ちを、どうしても抱かずにいられなかった。
「…そっちが、そのつもりなら」
だから徹弘は、頑なになる。
(オレにだって、考えがあるからな)
軽く拳を握り、決意の言葉を胸の中で呟くと、慌ただしく働く人並みから離れるため、宴会場に背を向けたのだった。
「───師走という忙しない時期にお集まりいただき」
金屏風を背に並び座る面子の中央でマイクを握り、挨拶をし始めた健一郎は、日頃より血色の良い顔色ながら、話し続けた。
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