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カチカチカチッと、ゆっくり刃を出す。
それを持った右手を高く掲げ、そのまま躊躇せず、左脚の太ももに刺した。
そしてそのまま、付け根の方へと、刃を肉の中でスッと移動させる。
刃を右太ももに移し、 今度は内部をぐちゃぐちゃと、音を立ててかき乱す。
周辺には既に血溜まりという呼称では足りない量の血が湧出している。
左前腕を同様に。右手は、左手の力が入らず、刃が骨に挟まれて折れてしまった。
「ははっ……」
カッターの刃を再度出して、握りしめる。
そして、首、ちょうど喉仏の下を掻っ切る。
勢いよく血が吹き出す。が、そんなことはないみたいに、もう一度。
もう一度。
もう一度。
やがて、視界が血に染まる。赤い血。紅い血。黒い血。茶色い血。
血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血。
「あっは……あは、あは、あはははははは!」
普通ならもう動けないであろう血の量だ。
しかしその手はまだ止まらない。
右手のナイフで右の目を貫き、そのまま耳へ。
左手のナイフで左の目を貫き、そのまま耳へ。
「えっ……は! あは! いへ! あへ! あはははははははははは!」
全身はもう血で塗れている。
しかし再度、喉へ刃を入れる。
「あっは! あひひ! あ! ──! ────!」
刃は声帯まで届き、声が出せなくなった。
ひゅー、ひゅーという喉からの笛の音だけがこだましている。
ようやく自傷が終わって、大人しくなる。
しかししばらくすると、また動き出す。
フィナーレとばかりに、カッターナイフの刃を全て出して、刃の方から喉に空いた入り口へと入れる。うなじを突き破らないように、やさしく、食道へ流し込む。胃に落ちた心地がした。
悠季の動きが止まる。
全身の血はとっくに、出しきっていた。
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