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紫陽花の花びらが地面を転がる頃、木々の根元には無数の穴が開き始めた。
直径2~3㎝程度だろうか。
頭上から、わしゃわしゃと蝉の声が降ってくる。
「和希、よく、聴きなさい。」
父さんの声だ。
「父さんしか、知らない事だ。誰にも話すんじゃないぞ。」
この雑木林の、丁度この辺りだっただろうか。
両手を合わせ、花を手向ける。
今日は―
7月3日、父さんの命日だ。早いもので、あれから
もう、18年になる。
僕は唾を呑みこみ、コクりと頷く。勢いで、額に溜まっていた汗が一斉に顎へ流れる。
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