1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
第2話
その年は異常気象で、全国各地でものすごい雨が降り続いていた。
入院した日からずっと雨。
その雨が、1週間ぶりに止んだ。
気晴らしに、少し外出をした。
いやらしい気はしたが、話すきっかけに何かお菓子を渡してみようと思った。
コンビニで最中を買って帰った。
タイミングを掴めずにいた時、おばあちゃんが窓越しに外を見に出てきた。
『今しかない、、、。』
最中を手に、おばあちゃんに声をかけた。
「これ、よかったらどうぞ。今日少し外出したので、、、。」
役者のオーディションなら即落ちだ。
けれどおばあちゃんは、そんな私の手を握って、
「嬉しい。ありがとう。」と、言ってくれた。
なぜか涙が出そうになり、それを必死でこらえた。
おばあちゃんは、私が知っている話を何度もしてくれた。
いつもカーテン越しに聞いていた話。
その間ずっと、私の手をきつく握っていた。
同じ話を聞いているその時間が、とてもあったかくて幸せだった。
カーテンはもう、開いている。
部屋も、心も。
最初のコメントを投稿しよう!