第1話

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第1話

ある夏の話。 私は持病の治療のため、生まれて初めての入院をする。 部屋は4人部屋。 1人は95歳のおばあちゃん。 もう1人は50代と思われる女性。 もうひとつのベッドはあいていた。 お向かいの95歳のおばあちゃん。 誰と話す時も、「ありがとう。ありがとう。」と、最後に言う。 日中はカーテンを開けているので、中の様子が見える。 1日のうち、大半は1人の時間。 横になるか、本を読むか。 それ以外の時間は、ただじっと座っている。 私はなんだか気まずくて、カーテンを閉める。 時々、面会の方や隣の人と話をするのが聞こえる。 誰かと話せるのが嬉しい、ということが、声から伝わる。 同じ話を何度もしているが、内容はしっかりしている。 『私も話したい。』 そう思うのに、挨拶すらまともにできない。 私には、おじいちゃん、おばあちゃんがいない。 そして、お年寄りは昔から苦手だった。 だから、どう切り出せばいいのかわからない。 そんな私だから、ただカーテン越しに声を聞くだけの日々。
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