ひと夏の思い出

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夏が来た。 夏が来るたびに君を思い出す。 なよなよしたノウゼンカズラが 風に揺れているよ。 君と出会ったのは、 夏が来て三週目。 恋ではないけれど、 三年となる今も未だに恋し。 君の言葉は 涼風のように心をほぐし、 その優しいまなざしは 茜色の空に輝いた。 夏が終わり、君は帰った。 それから夏は年ごとにめぐるが、 君と会うことは二度となかった。 あの冬、格別寒かったよ。 今年も相変わらず、夏が来た。 夏が来るといつも君を思い出す。 瞬く間にすぎたひと夏だったが、 三年となる今も忘れられぬ。
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