おかえりなさい

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おかえりなさい

 この春、大学に進学が決まった私は、部屋の掃除をする。大切な思い出の詰まった写真や、本、部活で使ったユニフォームや体育着、懐かしい玩具を私は段ボールに仕分けている。  そんな中で、懐かしい物を見つけた。  昔、おばあちゃんと一緒に近所のバザーで購入した二十センチほどの赤ちゃんの人形。大切にしていた赤ちゃんの人形はムメタと言う名前をつけては、毎日の様に一緒に遊び、枕元で一緒に寝たものだ。  母にねだり洋服を何着も作ってもらい、中でもお気に入りの毛糸の赤い帽子と当時流行っていたアニメのキャラクターの生地で作った服を着ているムメタは私の写真に幾度も映っている。  写真を見返すと、いつの間にかムメタが居なくなっている小学校高学年にもなると人形遊びはしなくなり、いつしか部屋の隅、段ボール、物置と場所を移していったのだろう。    そんなムメタを私は見つめる。  大学での一人暮らしは寂しいかも知れない。ムメタも連れて行こうかな。  持っていくものと書いた段ボールに私はムメタを入れた、お気に入りの赤い帽子と服をきたムメタ。机の上に置いてあげよう。  そんな風に私は荷物を片付け、そして荷物を送った。
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