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黄色い冊子には五年二組の思い出と書かれている。指でパラパラとめくり、クラスで結婚したい女子の一位の所を指さす。
「成程、一位ですね。海彦も」
「そうだよ。悪魔くん。君なんかホラ、名前も載ってないんだからね。ふふん、でも悪魔くんは仕方ないよ。あの時私の事なんか見えてなかったでしょうから」
白旗朱未は大きなため息を吐いた。
「琢磨はさ、生きてるよな」
化粧坂海彦は失礼な男だった。
「生きてるだろ。現にここに居るし、なんだそれ悪魔くんの件はまだ続くのか、悪魔だから生きていないとか、やはり僕は苛められていたのか」
化粧坂海彦と白旗朱未は目を合わせ、二人同時に頷いた。
「そうだよな。昨日ののぶ子の反応どう思った」
「ああ、なんか怯えていたというか怖れられたっていうか、よく覚えていないけど嫌われていたのかなって」
昨日寝られない程に気になった。
「そうなんだよね。何というかさ、俺たち全員お前が死んでいたと思っていたんだよね。悪魔ネタじゃないけどな」
「どういう事だ。悪魔ネタの方がマシな冗談だぞ。僕は生きていたよ。というか死んでない」
時計の針の音が聞こえる。
二人とも黙ってしまった。
見覚えの窓の景色は、先まで僕が立っていた校門が見える。あんなとこに三十分もよくいられたものだ。
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