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「おーい。何で黙るんだよ。何か話があったんじゃないのか」
「うん。そうなのよ。悪魔くんは六年二組から消えた。それはどうして。突然いなくなったよね。それってどうしてなの」
悪魔くんって言うなと言おうとして僕の動きは止まった。
何だ、この人たち。
「ごめんね」
何が起きているのか分からない。
昨日からずっと気持ちが悪い。
「僕は転校しただけだよ。家庭の事情というか親の会社の都合で、急になったのは会社の移動が急すぎて、今でいうブラック企業だったのかな。有無も言わさず明日から東京へ行けみたいな事を親から聞かされたけど」
教室のパネルヒーターが暖かい、昔はストーブが置いてあった気がする。
「転校しただけなのに、お前は居ない事に成っているのさ」
六年の文集やアルバムを化粧坂海彦はパラパラめくる。見覚えのある校舎と生徒、運動会の写真でガッツポーズを決める海彦の姿や幼い頃の知っている顔。
転校したからだろうか、
一枚も僕は写っていない。
「お前が居ないんだ。どこにもな」
「悪魔くんさ、転校したっていうけれど、それならどうして何も持って行かなかったのかな、絵具も習字道具も教科書も全部が教室に置いてあったんだよ。それって不思議な事よね」
まだ、見えてこない。
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