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「荷物を残し、次の日から来なくなった六年二組で香典を集めるとなるとやっぱり気になるのは貴方でしょ」
なんでそんな奴を同窓会に呼ぶんだろうか。
昔の知り合いに死んだと思われているとは知りたくない現実である。
「まぁそんな事はどうでもいいんだ」
化粧坂海彦は両手を合わせてパンと音を鳴らした。教室の空気が変わる気がした。
「琢磨よ。お前当時好きだった女の子の名前って覚えているか」
「海彦よ。お前この流れで何修学旅行の夜の会話ごっこを始めなければならないんだよ。さっきまで僕の生き死にの重たい話題をここで明るくできると思うなよ」
笑いもせずに化粧坂海彦は睨むようにもう一度声を出す。お前の好きだった女の子の名前はと。
「覚えているよ。唯ちゃんだ」
「そうだよねぇ。みんな知っていたもんね」
朱未が言うと、海彦はケラケラ笑う。
「それがどうした。良いだろ、昔誰を好きだったかなんて」
「うん、そうだよなぁ。まあそうだとは思っていたけど、ここからが本題なんだ井上琢磨。小川唯ちゃんはどこに行ったんだ」
小学校も高学年になると男女で遊ぶ機会は少なくなった。低学年の時は鬼ごっこからリレーと男女混合でする事が多くなっていたが、このクラスでは完全に男女に壁があった気がしていたんだ。
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