消えた悪魔と同窓会

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 一人の女性が小走りで現れる。冬だと言うのに藍色の半袖、胸元に大きくポンタと書かれた制服はコートを着た今の自分の服装が間違っていないか不安になる。ポンタの店内は暑くコートに付着した雪は早速解け始めていた。 「いらっしゃいませ。何年何組様でしょうか」  ポンタの女性は訳の分からない事を聞く。同じ様に遅れてきた男が答える。同じエレベーターに乗っていたのならば、昔のクラスメイトだろうか。 「幌東小の同窓会で来たんですけど」 「ええ、はい存じ上げています。それで何年何組様でしょうか」 「これです」  受付に飾られた幌東小学校一行様の看板を指さし、はっと気が付く。 「このフロアすべて幌東小の同窓会なのか」 「ええ。そうですよ。それではお客様何年何組様でしょうか」  ポンタの女性は聞く。少し苛立った様に何度かお客様と呼ばれるが、果たして何年何組の同窓会に自分が呼ばれたのか全く思い出せなかった。隣の男も同じように下をむいてメールや手紙を読み返している。 「ダメだ、すみません幹事の化粧坂(けしょうざか)呼んでもらってもいいですか。六学年の何処か全く思い出せなくて、五、六年の時は二組で四年って、なんだっけ。それか少し待ってください電話で聞いてみます」  この町より都会から来た。落ち着いた男として登場したかったが、どうやら無理らしい。救いなのは分からずに戸惑っているのが自分だけではない事くらいだろうか。     
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