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「早く飲まないと元が取れないぞ。あと三十分で終わりだぞ。随分遅かったな。珍しく来るっていうから、こうして俺の隣の席を開けて待っていたんだぜ」
見覚えのある顔が数人、後はよく覚えていない。
お互い様なのだろう。
「ああ、あれから十二年か。そりゃあ、デカくもなるよな。一番チビだったお前が一番デカいんじゃないか。ノブコの間ってのぶ子先生の事か、どんなセンスの部屋だと思ったが、元気そうで良かった」
小学生の頃の友人とこうして酒を飲む事が出来るとは思っていなかった。この町では無い中学に転校してからは連絡すらも取っていなかった。携帯電話なんて持っていなかったし年賀状を出す程出来た人間でも無かった。
突然の同窓会の手紙が届いたのは二か月前で、幹事の名前が化粧坂海彦と当時よく遊んでいた筈の男の名前だったからである。
「そうだな。あの鬼ののぶ子が今では小さく見える。随分痩せたよな。もう還暦だとよ。もう教師も辞めたらしい。お前の席を確保する為に、あまり話せてないから、今から挨拶行っとくか」
頷き、猪口の日本酒を飲み干す。
田舎の酒は美味い。
元クラスメイトの後ろを通り、部屋の上座で見たことの無い楽しそうな顔で笑う元担任の前へ行く。
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