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「こんばんは、本当に大きくなって。もうあのまま身長伸びないんじゃないかって心配してたのよ。今日会えるの楽しみにしていたのよ。化粧坂君」
「はは、まだまだお若いじゃないですか。ほら隣にいるの、こいつ琢磨ですよ。井上琢磨。俺と同じくらいチビだった」
化粧坂が話した途端、のぶ子先生の悲鳴が響いた。
一体何をしに来たのだろうか。
コンビニで買った酒を飲みながら、一人ホテルでテレビを見ている。チャンネル数が少ない。
アレは、何だったのだろう。
どういう意味だったのか。
小学生の頃、あの教師と自分に何があったのだろう。十数年前の事がほとんど思い出せない。歳は嫌だなとのぶ子先生の言葉を思い出す。
覚えられていない事は、珍しい事では無い。
存在感の強い生徒であった事は一度もなかったと思う。それに毎年沢山の生徒に授業を教えている教師が自分の事を覚えているとはやはり思えない。教師は一人でも生徒は五万といるのだから。
化粧坂海彦の様に特別目立つ事をしたものなら兎も角、目立つ奴と一緒に遊んでいただけのその他一名でしかなのだから、それはそれで仕方がない。
多少は少年時代を美化したいものだし、覚えていてほしかったと思うが、それ以上に、反応がおかしかった。
違う。
おかしいでは無い。まるで狂っていた。
「皆は僕の事を知っているのか」
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