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「いやいや、だからすまんね。と謝ったろう。それに昨日俺が何て言ったか覚えているか、幌東小学校の六年二組の教室前で集合と言ったはずだぜ。外でハチ公みたいに待ってるなんて驚きだよ。こっちの人間でもそんな事しないぞ。寒いもん。小学校の前に突っ立ってるオッサンなんか逮捕される」
いや、お前はオッサンには見えないか。
「何が言いたいんだ。学校に呼び出して喧嘩を売りに来たのかよ」
「いやいや童顔なんて今となればラッキーだろう。これからみんな爺になるのにお前はまだ小学生みたいな顔さ」
まだ酔っているのだろうか軽快に笑っている。
昔から明るい奴だったと思う。
そんな化粧坂海彦だから教師に覚えられ、昨日の同窓会を仕切る事が出きるのだろう。羨ましいとは思わないが、それでも鬼ののぶ子と当時恐れていた筈の教師は自分の事なんか忘れている。
それどころか、昨日のあれは、逆だ。
脅えられていた。
その事に元クラスメイトであろう誰も何も言ってくれなかった事は、そういう事だろう。誰も自分の事など覚えていない。
そりゃあそうだと、泣きたくもなる。
こんな田舎まで出てきて、クラスのうち一人としか話すことが出来ない姿は惨めでしかない。せっかく誘ってくれた化粧坂海彦には悪いが、とんだピエロに仕立てられたものだと当時なら喧嘩になったのでは無いだろうか。
否、当時も彼はケラケラと笑いかわすのだろう。
「そんな睨むなよ。とりあえず六年二組の教室に行くぜ。多分もう来ている筈だから」
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