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消えた悪魔と同窓会
七時を過ぎると駅員の居ない無人駅に薄汚い溜息を吐いた。見渡したところで何もないつまらない町。
足が埋まる程の積雪に初めて来た人間は、戸惑うだろう。年に数回降る雪を見てはしゃぐ都会の人間は、どんな顔でこの白い世界に足を踏み入れるのだろうか。遠くに光る信号機の赤い警告色は帰って着た余所者に帰れとでも言いたそうに力強く光っている。もう一度薄汚い空気を吐いた。
タクシーを捕まえたいが、車の一台も走っていない。夜でも雪明りで明るいが、何度か転びそうになりながら歩く。
煌びやかな看板達は自分が一番だと他所の光と戦う。二大派閥が混在した町の唯一の歓楽街は若い女から年金暮らしができる歳の男まで老若男女達が蠢いている。ポンタとカタカナで書かれた看板は数十年変わらずにこの歓楽街の中心で冷えた客を温めている。変わったと言えばこのポンタが屋台からビルに変わった事だろう。
コートのポケットに入った手紙を取り出し、目的地を確認してからエレベーターで手紙に書かれたフロアへ向かう。
エレベーターを四階で降り、一行様と書かれた受付で呼び鈴を鳴らす。
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