大人の事情 その2

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「大人の事情、その2?」 「うん、そう。一つ目はツキノ君のこの性別の話、二つ目はメリア王国という国の話しだよ」 アジェさんはそう言って頷いた。 メリア王国、俺の生まれ故郷。物後心付いた時には既にファルス王国で暮らしていた俺にとっては故郷という概念すら曖昧な俺の本当の両親が暮らす国。 俺が生まれた頃、メリア王国はとても荒れていたのだとアジェさんは言った。 「今国王を名乗っているレオンさんは先々代の王様の三番目の息子、三番目というからには上には2人兄がいた、1人はグノー、もう1人が先代の王様、その先代の王様の跡を継ぐ形でツキノ君のお父さんはメリアの王様になったんだ、やっぱりそこに反発があるのは当然だった。レオンさんは、本当は王になんてなりたくはなかったんだよ、だけど、王家の三男、その名前がどうしても付き纏って結局形だけでもという声が上がってレオンさんは王位を継いだんだ」 アジェさんはメリアの現状を淡々と語っていく、それはまだ歴史書にすら語られていない話である。 「だけどね、レオンさんは実を言えば先々代の王様の実の子じゃないないんだよ。レオンさんは先々代の王様の奥さん、つまり王妃様が不倫をしてできた子供、父親は一介の兵士だった。先々代の王様は先代の王様に簒奪される形で王位を奪われたんだけど、命までは取られてはいなかった、そこはやっぱり親子だしね、先代の王様はそこまでの事はしなかったんだよ。だけど先代の王様が死んで、レオン王が立つと先々代の王様はそれに納得がいかなかった」 「その人、まだ生きてるんだ…」 「言ってしまえば血は繋がらなくてもツキノ君のおじいさんに当たる人だからね、まだそこまで歳を重ねてもいないし存命だよ。先々代の王様は実の子に追い落とされたのは不服でも納得していた、けれど不義の子に王位を継がせる事には納得がいかなかったんだ」 「じゃあ、そのじいさんは…」 「うん、もう一度自分が返り咲こうとレオンさんに戦いを挑んだ。でもそれは失敗に終わったんだよ、何故なら先々代の王様には決定的に人望がなかったから。権力を誇示するだけの暴君、それが彼の評価で民衆は誰も彼の話には耳を傾けなかった」 「なんだ、だったら別に…」
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