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尋常でない震え方、人が目の前で死んだのだそれは当然の反応だとも言える、けれどその男の首を撥ねたのは貴方なのに…
「こんな、こいつが…」
どこか虚ろな表情へと変わった義母グノーが剣を握り直し、横倒しに倒れた男の死体にまたしても剣を突き立てた。
それは執拗に何度も何度も、その身体が肉片に変わるまで、何度も繰り返されて俺はその光景を赤い部屋の中で呆然と見続けていた。
「ツキノっ…っ、グノー!!」
次に部屋に飛び込んできたのは義父のナダールだった。なんでこの人達俺がここにいるって分かったのかな?
ナダールは肉塊に剣を突き立て続けるグノーを羽交い絞めにするようにして抱き締めた。
「止めてください、その人はもう、死んでいる…」
「でも、だって…こいつが」
義母の視線がゆらりとこちらを向き、俺を見据えてまた悲鳴を上げた。
俺にはもう何が起こっているのかまるで分からなかった。ナダールに続いてばらばらと何人かの男達が続いてその部屋の中に入ってきて、皆一様にその部屋の惨状に顔を背けた。
「ツキノ、大丈夫か?何があった…?」
男達の1人が俺に駆け寄りそう問うのだが、俺はもう訳も分からず首を振る。
義母の悲鳴はまだ止め処もなく続いていて、義父はそれを宥めるように抱き締めその頭を撫でている。
赤い、部屋も俺の手も身体も全部、真っ赤…
意識が薄れる、霞がかかる、それは安堵なのか絶望なのか、俺はその場で昏倒した。
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