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アリのシゴト
「何かお手伝いしましょうか?」と訊いた。
アリは重い荷物をいったん卸し、滴り落ちるあせを強健な足で拭った。
「じゃ、これを105番の木にすむフクロウさんのもとへ届けてくれる?」
といって、急いで去った。
ワタシは目の前にある、小さいながらも錨のように重い包を背負い、
目的地へと向かった。
初めて仕事らしいシゴトができて無上の喜びを感じるが、
分秒ごとに増強する無情な日差しがからだじゅうから汗を絞り出す。
何時間も経過して、やっと105番の木に着いた。
泥まみれの足が棒になった。でもこれからが問題である:
どうやって上がるか?
手ぶらでさえ樹に登れないワタシなのに、荷物で沈んでしまいそうな今となってはましてそんな気にならなかった。
フクロウさんは昼寝をしていて、呼ぶわけにもいかなかった。
とりあえず荷物をおろして、アリが来るのを待つのが一番いいと思った。
そこでワタシはやっと解放された気になって、包を外した。
すると、ドーンという轟きが園中に響きわたった。
包がいきなり肩から滑り落ちたのだ、ただ重すぎてどうも仕方がなくて。
荷物が割れて、中身が丸見えになった。
豪華な絵画、盆栽、それから高貴な茶道具がほんの一寸でみじんに砕いた。
ワタシは何もできなかった。
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