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クモのシゴト
あのずぶとくて鋭かった響きは、フクロウのおじいさんを眠りから醒ました。
そしてみんなも、まるで爆弾がおとされたかのように慌てて外へ出た。
集ってきたものたちのなかには、アリもいた。
そのありさまを見て、アリは特に驚かなかった。
みんなで片付けた後、花園はまたいつものように静まり返った。
日がとっぷり暮れた。そして翌朝、ワタシはクモのもとを訪れた。
「クモさん、きれいなネックレス編んでいるね。」
「そうよ、毎日休まずに編んでいるのよ。ほしいならいくつかあげるよ。」
クモのクイーンは振り向きもしないで上下左右に歩き回り、
しずくでできた珠玉の位置を見ながら丁寧に調整していた。
「でも、ワタシもクモさんのように、ネックレスが作れるようになりたいな。」
「そう?じゃ一緒に作りましょう。こうやって水をかき集めて、あらかじめ編んだ網の上にのせると、ほら、できあがり!」
クモは新作の前に足を伸ばせ、誇らしげに見せつけた。
宝石のようなしずくで飾られた自然のネックレスはいかにも輝かしい、
でも糸を吐けないワタシにどうしてその土台となる網を作ることができよう?
ワタシの悩みに気付いたクモは、「いいのよ。網の部分はあたしが作るから、かき集めてきた水をのせるのだけお願いね。」といい、しずくをのせることに限ってやらせてくれた。
でもワタシは、それさえできなかった。
木の葉や地面にたまる水をすくっては指と指のすきまからこぼれ、
ようやく網のところへ運んでも、形がまともなものにはならなかった。
ワタシはストローで水を蓄え、クモがするように一粒一粒吹きかけようとした途端、
ストローが緻密に編んだ網に絡み、とれなくなった。
ワタシは再び慌てた。昨日のような大惨事を二度と起こすまいと誓い、
やっとのことで外せたが、見ればこはいかに、
網が、クモが大切な養分と時間を削って出来上がった巣が、
真二つに切り裂かれたのではないか!
ワタシは顔が真っ赤になる前に真っ青となり、一言も発せぬままにじっと見つめていた。でもクモは予想外に楽観的だった。クイーンは「しょうがないわね。あんたが悪いんじゃないのよ。よく頑張ったもんね。」と一途にワタシを慰めた。
ワタシの前にやってきて、出来上がったばかりの一連のみずみずしいネックレスを首につけてくれた。目先の涙の珠玉がいかにも輝かしかった。
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