2.凛との偶然の再会

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彼女と初めて会ったのは6年前、ソープの客としてだった。源氏名は「亜里沙」と言った。遊び人として知られている取引会社の部長がどうしても付き合えというので付いていった。 ソープは初めてではなかった。その時が3度目だったと思う。1度目は上京して興味半分で出かけた。ただ、その時は女性経験もなく、あっという間に終わってこんなものなのかと思った。そこは高級なところではなかったので、その後、もう少し高級なところへ行ってみたが、同じようなもので感慨もなかった。 そこは部長の行きつけと言うだけあって高級ソープだった。店が選んでくれたが、その時の相手が彼女だった。細面でどこか憂いのある髪の長いスリムな娘で、テクニックは抜群だと思った。 美形で好みのタイプだったこともあって、一人で足を運ぶようになった。そのうちに違う娘とも浮気してみたりしたが、やはり彼女が抜群なのが分かった。 それからは、月1回位でずっと通っていた。独り身なのでお金にゆとりもあったけど、やはり女性がほしかったのだと思う。 2年ほど通っただろうか、店を変わることになったと言われた。そして新しい店の名を教えてくれた。行ってみると新しい店は前の店より少し格下の店だった。源氏名も変わっていた。 時間が短くなるが料金が安くなるので好都合とここも1年ばかり通った。このころになると携帯の番号を聞いていたので、出勤に合わせて予約を取ることができた。 それから、また店が変わった。今度はもっと格下の安い店だった。ここも1年ばかり通った。最後は突然店を辞めていて、携帯も解約されていたのでどこに行ったのか分からなくなっていた。 あれからも、月に1回ぐらいはどこかの店へ行っていた。三十歳を過ぎたとはいえ健康な男子なのだから女性が欲しくなるのは当たり前だ。 簡単に欲望というものを満たしてくれるし、生きている満足感も得られる。経験を積むことで男としての自信もついてくる。ただ、このような怠惰なことに慣れると、素人の女性と付き合うのが段々億劫になってくる。 「亜里沙」はいろいろなことを教えてくれた。どうしたら女性が悦ぶかも。そしてそれを自身に試させたこともあった。あのころが身も心も仕事も生活も一番充実していたようにも思う。
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