2.凛との偶然の再会

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時々は「亜里沙」と初めて会った店へも、2番目の店、3番目の店にも行ったりした。もちろんあの「亜里沙」にはもう巡り合わなかった。 きっと足を洗ったのだろうと思っていた。年齢的にはもう30歳に近かったと思う。身体を壊したのだろうか? どこかで幸せに暮らしていればいいと思っていた。 今、カウンターの中にいる彼女は美しく、元気で憂いもなく楽しそうに客と話している。幸せに暮らしていてくれてよかった。懐かしい気持ちもあるが、迷惑をかけてはいけないから、もうここへは来てはいけないと思った。ただ、もう一度だけゆっくり話をしてみたかった。 誰かがそろそろ帰ろうと言っている。もう11時を過ぎている。遠い連中は終電がなくなる時間だ。割り勘で会計を済ませたが、そんなに高くもなく、ほどほどの値段だった。 週末だけどさすがに3次会へ行くつわものはいない。妻子のいるのがもう半数近くになっている。皆、地下鉄の階段に吸い込まれていく。それを後ろから見届けると、ゆっくりスナックへ戻った。
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