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ドアの向こう、放送室から声が聞こえる。
よく見たらドアが半開きだ。ちょっと呆れて笑いが出た。
一番防音にしないといけない場所じゃないのかな、放送室って。
ノックをしようと腕を上げて固まる。
今、なんて?
「じゃあ問題ないじゃん。付き合って」
「いいんですか?僕で」
「少しでも早く手を打たないとヤバそう」
クスクスと聞こえてくるやつの笑い声。
まんま現場に出くわしたのは初めてかも。
無意識に右手が心臓あたりをぐっと掴む。
胸が締め付けられるってのはこういう事を言うんだな。
つう、っと頬を伝うモノを手の甲で拭う。
何が今のままで、だ。そんなこと無理に決まってるじゃない。やつは遠からず私から離れていく。
佑樹に彼女が出来たら。
私はただの幼なじみ。そのうち私のことはただのご近所さんに転落する。
唇についた涙か若しくは汗が、しょっぱい。
「考えさせて先輩。」
「オッケー。期待してる」
「お疲れさまでした」
いけない、隠れないと。
慌てる私を嘲笑うかのようにバンと開くドア。
上手い具合にドアの陰に隠れてみたいだ。
彼女はそのまま振り返ることもなく生徒玄関に向かって行く。
私の知らない女子。3年か?
彼女が、佑樹を?
早く、手を打つ?
私から?
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