夏に舞い散る、白き羽

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安貞(あんてい)三年(西暦一二二九年)  この年、異変の片鱗(へんりん)を見せ始めていたが、この時、誰もそれを予知出来る者はいなかった。  天候不順による、飢饉(ききん)の状態にあり、危機を感じる事態にはあったのだが、それは今後起こる事への序章にしか過ぎなかった。  時は鎌倉、時の天皇、後堀河天皇(ごほりかわてんのう)はこの飢饉を重く感じ、三月五日、年号を「寛喜(かんぎ)」と改めた。 「はぁ、今年も作物の育ちが悪い。こんなのがいつまで続くのか」 「五十年前に比べれば、まだ良いのでは無いか。あのときは、源氏と平家の争いが激化しており、酷いもんだったと聞く」 「だが、そのおかげで俺たちの今の立場があるわけだし、何ともいえんなぁ」  都を歩く、武士とおぼしき者が、今の現状を嘆きながら会話をしていた。 「だが、あの時は農民が土地を投げ出す者も多く、年貢(ねんぐ)が取れず大変だったそうだ」 「あの頃は、公家(くげ)中心だったから、主に困ったのは貴族だったが、今は我々武士の時代だ、今回の事で困るのは我々なのでは無いか」 「いやぁ、都はまだ公家のほうが力はある、我々の立場は昔よりはいいとはいえ、こちらの力はここでは余り影響力がない。とはいえ不作になるのは今後を考えると良くない兆しだな」 「そうだな、あまり長引かぬ事を祈るしかないな」
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