夏に舞い散る、白き羽

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 この時より約五十年ほど前、治承(じしょう)寿永(じゅえい)の乱、いわゆる源平合戦まっただ中に、養和(ようわ)飢饉(ききん)が起きた。干ばつにより西日本一帯が不作になり、土地を放棄する農民達も発生し、年貢の入らぬ都は混乱に陥った。  その後、ご存じ平家滅亡に至り、鎌倉幕府成立となるのだが、東日本一帯は幕府の力が及ぶも、西日本まで力が及ばず、二大勢力による二重支配状態となるのである。  寛喜(かんぎ)と呼ばれる年号は、その後前代未聞の異常気象を引き起こすのである。  寛喜二年、この年は前年からつづく飢饉はじわじわと拡大していた。  冬が終わり春を迎え、夏が近づきつつあるにも関わらず、まったく暖かくなる兆しが無い。いわゆる冷夏である。 「もうすぐ夏だというのにまったく暖かくなる兆しが無い、どうしたことか」 「昨年の不作で備蓄(びちく)もない、今年も不作となると年貢も納められぬどころか、いずれ食べるものもなくなるぞ」  農民の男達は困り果てた様子で、発育のわるい苗を見る。このまま苗が育たなければ秋の収穫に影響が出るのは必至、農民達にとっては死活問題である。 「まぁ、まだ夏には時間が少しある、様子をみるしかあるまいて」
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