42人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
そこにいたのは、あの邪神付きの女だった。
ーそんな、この人があきと君のお母さんだったなんて。
女は今災いをもたらす邪神付きとして、千草と空に消されそうになっている。
瑠璃はあまりに惨い現実に呆然とし、固まってしまった。
そんな瑠璃をよそに、あきとは泣きそうな声で叫んだ。
「ママー、ママー、ママ!僕だよ、あきとだよ!」
邪神付きになってしまうと、生前の記憶や人格は失われてしまう。今回も例外ではなく、やはり女があきとに反応することもなかった。
「ママ!」
あきとは反応のない母親に業を煮やして、駆け寄ろうとした。
「あ、危ない!」
慌てて瑠璃が止めて、抱き寄せた。
「放せ、放して!」
あきとは駄々をこねて暴れた。それを瑠璃は黙って必死で抱え込んだ。
しばらくするとあきとは静かになった。
そしてうなだれながら涙声で言った。
「僕、ママのいうこと聞かなかったから、僕のこと嫌いになったのかな」
「…?」
「地震のとき、ママはすぐテーブルの下に隠れろって言ったのに、僕…」
「ちょっと待って、地震って何?」
瑠璃は咄嗟にあきとの話を遮った。ここ数か月人が亡くなるような天災は記憶にない。
最初のコメントを投稿しよう!