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「…ねえ、ママは僕が悪い子だから、僕のことわからなくなっちゃったのかな?」
不安に揺れるあきとの声。瑠璃はぎゅっとあきとを抱きしめて、力強く言った。
「そんなことない、絶対大丈夫!」
そう言ってはみたものの、瑠璃はどうすべきか全くわからなかった。
瑠璃はあきとの母親が千草たちによって、始末されるところを見せたくなかった。
千草たちがあきとの母親を殺さないで済む方法はたった1つ。邪神を払って正気に戻すことだけだ。
だがそれは決して容易なことではない。まず前例でさえないことなのだから。そしてその方法でさえわかっていない。だから千草たちは邪神付きを手にかけるしかないのだ。しかしそれでも瑠璃は諦めたくはなかった。2度も母親の死を目にするという惨いことをあきとにさせたくはなかったのだ。
ーでも、一体どうすればいいの…?
どんなに必死に考えても名案は思い浮かばなかった。
ふと千草たちの方に目をやると、相変わらず酷い惨状が見て取れた。それにもういつ、千草たちがあきとの母親にとどめを刺してもおかしくない状況だった。
ーそうだ、あきと君を見たら正気に戻るかもしれない
しかし瑠璃はその思い付きをすぐに頭から打ち消した。何せよ先程のあきとの叫び声に無反応だったのだ。あきとを一目見て自我を取り戻すとは考え難かった。
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