第一の扉 帰郷

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声の先は、明るく開けた場所のようだった。 「ちょっと、道教えてくださーい!」 瑠璃は大声を出しながら、近づいていった。疲れも一気に吹っ飛んだ表情だ。 しかし瑠璃の元気は目的地点に到着した瞬間、すぐに消えた。瑠璃は唖然として、自分の目を疑った。 人がいなかったわけではない。むしろ新宿や上野といった都内の駅並みに、人でごったがえしている。つまり問題はそこではないのだ。 その人々が着ている服が変なのだ。男も女も関係なしに、みんな同じ服を着ている。お年寄りも、幼児や赤ん坊も関係なしにである。 全員、白い着物を着ているのだ。よく怪談物に出てくるお化けが着そうな真っ白の着物だ。 しかしおかしな点はそれだけではない。 目の前には大きな川がある。しかもそれは対岸が見えないくらいの河幅である。言うまでもないが、ここ青守地区には小川はあっても、そんなアマゾン並みの川はない。そして川岸にはゆさゆさと古い柳が揺れている。 ちなみにその川には橋はかかっていない。白い着物の人は、柳の根元から船に乗って対岸に運ばれていくようだ。
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