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川のそばには、立派な蔵が沢山建ち並んでいる。その1階は色とりどりののれんが掛けられていて、全て店となっているようだ。
「ここは、どこなんだろう」
瑠璃は叫ぶわけでも、投げやりに言うわけでもなく、ぼそっと呟いた。人の数に服装、大きな川や沢山建ち並ぶ店。どれをとっても、瑠璃の知っている故郷とは程遠いものだ。
最初瑠璃は、夢だと思おうとした。しかしながら先ほど転んだ膝の痛みが、これは現実だと伝えてくる。
どれほど目の前の光景に呆然としていただろうか。瑠璃はふと納得した。
「あぁ、これは撮影なんだ」
きっとこれは、映画かドラマの撮影なんだと瑠璃は思った。あるいは、街起こし的な何かか。
しかしそんな瑠璃の無理矢理の納得も、すぐに終わりを迎えてしまう。
瑠璃のいる小道の隣の店から、あるものが瑠璃に話しかけてきた。
「お嬢さん、向こうに行く前にここで一服していかないかい?」
大きな白い兎だ。人の腰丈ほどはあるだろうか。しかも2本足で立っている。前足で持っているのは、お茶と団子だ。
瑠璃の知っている兎はまず、当たり前だが2足では歩かないし、もっと小さい。まして人の言葉を話しはしない。
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