序章 おもひで

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そして蔵の奥の壁中央には、一際目を引くものがあった。 大きな龍が描かれた黒い扉だ。 厳かな近寄りがたい雰囲気を出していたが、当時秘密の探検をしている気分の私は無頓着だった。 小走りで扉に近づいて行った。 後ろから兄たちが慌てた声で私の名前を呼んだ。 「なあに?」 そう言いながらも、私は目の前の扉に触れた。 その瞬間、龍と目が合った。 驚いて逃げようとしたら、押してもない扉が自ずから開いた。 そして、何かが出てきた。 私が悲鳴を上げようとしたとき、背後から重たいものが突如覆いかぶさってきた。 その衝撃で私は、しばらく意識を失ってしまった。 目を覚ますと、上には重たいものがのっかてて暗かった。 何だか体中べとべとしたし、血なまぐさかった。 気持ち悪かった。
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