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空は地上に飛び降り、千草は腰の刀を抜き臨戦態勢であった。
-え、何?このまま闘うの?
瑠璃は状況がいまいち飲み込めずに戸惑っていた。
兎や犬といった神使や死者たちは驚き腰を抜かす者もあれば、逃げ惑う者も多くいた。
「うわぁーん、こ、こわいよぉー。ままぁー、どこー?」
死者や神使が逃げ回り混沌とした中から幼子の泣き声が聞こえた。瑠璃は慌てて人の並みを掻き分け、声の元を探った。このまま放っておけば、小さな子どもは踏み潰されてしまう可能性さえあった。それほどこの場は混乱して、ちょっとした地獄絵図同様だった。
「あ、いた!」
人の流れに逆らって数歩歩くと、泣き声の主はすぐに見つかった。幼稚園くらいの男の子だろうか。
「君、大丈夫?お名前は?」
男の子に駆け寄り、瑠璃は咄嗟に訊ねた。
「僕、あきと。5歳」
幼稚園の可愛らしい制服が似合いそうな少年は、やはりあの白い着物を着ていた。
-こんなにまだ幼いのに、死んじゃったのね…
両親もさぞかし悲嘆にくれているのだろうと瑠璃が思っていると、あきとは急に瑠璃の服を引っ張って言った。
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