第四の扉 真実と決断

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ー本当に可愛らしいな、この子。 瑠璃は幼いあきとの愛らしさに目を細めながら思った。そしてこの子が死者だということを思い出し、同時に胸を痛めた。 「僕のママね、あっちにいたの!」 あきとはそう大声で叫ぶなり、瑠璃の手を強く引いて走り出した。小さなあきとの背丈はまだ大人の腹あたりまでしかない。瑠璃は混乱した人ごみの中であきとが吹っ飛ばされたり、つぶされたりしないか心配しながらついて行った。実際あきとは人の流れに逆らって進むため、危険なところは多々あった。その度に瑠璃はあきとをガードしたり、持ち上げたりした。 次第にかき分ける人の人数も減ってきたが、あきとはまだ前へ進んだ。さすがにここまでくると、瑠璃も明人の見間違いではないかと疑いだした。 「ねえ、あきと君。こっちにはあんまり人はいないよ?戻ろうっか」 瑠璃は出来るだけ優しい声を出して言った。だがあきとは口をへの字にして、黙って首を横に振った。 ーまずいな。 瑠璃は提案に乗ってくれないあきとに焦り始めていた。瑠璃たちの進んでいる方向は、実は先程瑠璃が来た道であり、もうすぐ千草と空のいるはずの場所が見えてくる。瑠璃がここに来る直前、2人は臨戦態勢で、なおかつ千草に関しては腰から刀を抜いていた。瑠璃は血なまぐさい現場をあまり幼い子供に見せたくなかった。
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