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そんな瑠璃の胸中とは裏腹に、問題の現場が近づくと死者も神使もまばらになったため、あきとは小走りになった。
「ま、待って…!」
瑠璃は必死に止めようとしたが、母親に会える期待を胸に秘めた子どもを押しとどめるのはかなり難しいことである。あきとは瑠璃を無視して駆け出した。瑠璃もすぐ後を追おうとしたが、身長の低いあきとが人と人の間を縫うように走ったため、追い付くのがなかなか困難だった。
「ママー!」
あきとの声はより一層高くなった。
ーよっかた、会えたのね。
嬉しげな明人の様子に、瑠璃は自分の心配は杞憂に終わったかとほっとした。
しかしそのとき、勢いよく動いていたあきとの足が突如、地に張り付いて動きを止めた。
「ま、ママ…?」
不安そうな明人の声。瑠璃は嫌な予感にかられ、足を速めた。
「…あきと君!」
瑠璃はあきとのもとにたどり着くなり、何とか声を振り絞って叫んだ。そしてすぐさま瑠璃はあきとの目を自分の腕で覆った。
瑠璃たちは丁度先ほど瑠璃が千草に突き飛ばされた場所に立っていた。
だが余りにも状況は変わり過ぎていた。瑠璃は自分が地獄に来たのだと思った。
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