第四の扉 真実と決断

11/51
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
辺りは真っ赤だった。土も草も柳も皆、鮮血に染まっていた。蔵の真っ白な壁にさえ、その赤は飛び散り、模様を描いていた。 ー誰がこんな大けがしているの? 尋常ではない血の量だ。邪神付きの女、空、千草、戦っている者は全員死者であるから、大量出血でもう1度死ぬなんてことは無いのかもしれないが、それでも通常通りでいられるとも考え難い。 瑠璃は千草、空、女の順にじっくりとその様子を見比べたが、3人ともいたるところに切り傷があり、そこからの出血か、はたまた相手の返り血か全身が真っ赤になっていた故、誰がどれほどのけがなのか判断することが出来なかった。 「ま、ママ、どうして…?」 目の前の惨状に瑠璃が呆然としていると、腕の中のあきとが震える声で言った。 ーそうだ、私はこの子のお母さんを探してたんだ 瑠璃は本来の目的を思い出し、気を引き締めた。 「あきと君、お母さんはここにはいなそうだよ。あっちに戻ってまた探してみよっか」 ここには瑠璃とあきとの他には、空と千草、邪神付きの女しかいなかった。ここにはあきとの母親がいるわけがなかったから、瑠璃は一刻も早くあきとをこの場所から引き離したかった。 しかしあきとは瑠璃の言葉に首を横に振り、驚くべきことを口にした。 「僕のママ、いたよ?」 「…えっ?!」 あきとは驚いて力の緩んだ瑠璃の腕を自分の顔から外し、ある方向を指差した。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!