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私だって立派な猫。生きていくのに何が必要かくらいは分かる。
まずは寝床。ゆっくり休める場所がほしい。
できれば温かい毛布と柔らかい枕、何かオモチャがあると嬉しいわね。
けれど、いくら探しても毛布と枕が落ちているわけもない。
仕方がないので適当な場所で我慢しよう。
良さそうな場所はいくつかあった。
一つは自動車の下。突然動き出さないか心配だけど。
もう一つは草むらの中。葉っぱがくすぐったいし、虫がいてびっくりするけど。
一番良さそうなのは古い家の軒下。
誰も住んでいないみたいだけど、真っ暗でなんだか不気味だわ。
次に探すのは食べ物。私はカリカリよりも柔らかい缶詰が好きだった。
けれど、やっぱり缶詰なんか落ちていない。カリカリだって落ちていない。
偶然出会った他の野良猫は小鳥を捕まえて食べていた。あげないぞ、なんて言われたけれどそんなもの欲しくないわ。
ああ、お腹すいたな……。
道の石ころがご飯に見えてきた。きっとカリカリみたいな味がするんだ。
このまま食べる物がなくて死ぬのかな。
それとも我慢して鳥やネズミを食べるのかな。不安ばかりが募っていく。
あてもなく歩く私に上から声がふってきた。
「あらあら、野良猫さんかしら?」
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