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おばあさんの家のすぐそばに一台の車が停まる。
中から数人の人間が出てくると、おばあさんの家の庭にやってきた。
足音を聞いた数匹は近づいてくる人間から逃げるように走っていった。
私も逃げた方がいいのかと思ったが、他の猫たちはのん気に眠ったまま。
どうしようかと迷っていると、
「あ、猫が眠ってる!」
大きな声が耳にひびいた。
これには眠っていた猫たちもおどろいて、みんな一目散に逃げていく。
私も灰色猫の後を追った。
物陰から伺うと、さっきまで私たちが寝ていた庭に二人の人間の子どもがいた。
どうやら逃げた私たちを探しているようで、見当ちがいの方向をキョロキョロと小さな頭を動かしている。
その後ろから顔をのぞかせたのは大人の人間。
どうやら二人のお母さんらしい。
大きな声で二人を呼ぶと、小さな足音は家の方へ消えていった。
やがて家の中から声がする。
さっきのお母さんだろうか。どこかイライラしているような声。
「もう、また野良猫にエサあげてるの? ご近所の迷惑でしょ?」
どうやら私たちのことみたい。
耳をすましてみるけれど、おばあさんの声は聞こえない。
その後もお母さんの声はぶつぶつと聞こえたが、なんの話かは分からない。
ただ、私たち野良猫のことが気に入らないみたい。
灰色猫はぼそりと言った。
「いつもこうなんだ。オイラたちの声や臭いが嫌いみたい」
あの女の人はおばあさんの娘。二人の子どもはおばあさんの孫らしい。
娘や孫たちがいつ出て行くか分からないので、野良猫たちはおばあさんの家から出て、落ち着ける場所を探しに行った。
私はなんとなく、物陰に隠れたままで、おばあさんの家に残った。
しばらくして娘と孫たちは家から出てきた。
見送りに出たおばあさんに別れを言って、車に乗り込みエンジンをかける。
三人を乗せた車はあっという間に遠くなった。
曲がり角を曲がって見えなくなるまで、おばあさんは見送っていた。
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